就労移行支援とは?内容・対象から費用まで解説|あなたの「働きたい」を叶える羅針盤

「働きたい、でも一歩が踏み出せない」あなたへ

「働きたい」という気持ちはあるけれど、病気や障害が原因で、就職活動に不安を感じたり、社会に出ることに自信が持てなかったりする。あるいは、一度は就職したものの、職場でうまくいかずに離職してしまい、次の一歩をどう踏み出せばいいか分からない。多くの方が、そんな悩みを一人で抱えています。

もしあなたが今、そのような状況にいるのなら、「就労移行支援」という選択肢があることを知ってください。これは、国が定める障害者総合支援法に基づいた福祉サービスの一つです。単に仕事を見つけることだけを目的とするのではなく、あなたが自分らしく、安心して長く働き続けるために必要なスキルや自信を育むための「羅針盤」となる場所です。

この記事では、就労移行支援が具体的にどのような場所で、どんなサポートが受けられるのか、そして、それがあなたの未来にとってどのような価値を持つのかを、体系的かつ具体的に解説していきます。

就労移行支援は「未来の自分」を準備する場所

就労移行支援と聞くと、何か特別な訓練施設をイメージするかもしれません。より分かりやすく言うなら、「一般企業への就職を目指す、大人のための個別指導塾」のような場所です。その最終目的は、利用者が一般企業に就職し、その職場で安定して働き続けることにあります。

そのため、支援内容は一人ひとりの希望や課題に合わせてオーダーメイドで組まれます。生活リズムを整えるところから始め、働く上で必要なスキルを学び、自分に合った仕事を見つけ、そして就職後も職場に慣れるまでサポートが続きます。決められたカリキュラムをこなすのではなく、あなた自身の「なりたい姿」に向かって、専門のスタッフが伴走してくれるのが最大の特徴です。

あなたの「悩み」は「強み」に変わる|具体的なサービス内容

就労移行支援事業所では、利用者が抱える様々な悩みに寄り添い、それを乗り越えるための具体的なプログラムが用意されています。ここでは代表的な悩みを起点に、どのようなサポートが受けられるのかを見ていきましょう。

「働く自信がない」→基礎を固めるトレーニング

長い間仕事から離れていたり、社会経験が少なかったりすると、「自分にできるだろうか」という不安が大きくなりがちです。就労移行支援では、まず働くための土台作りから始めます。

  • 生活リズムの構築:決まった時間に事業所に通う「通所」を通じて、安定した生活習慣を身につけます。
  • ビジネスマナー:挨拶や言葉遣い、電話応対、報告・連絡・相談といった、社会人としての基本的なコミュニケーションを学びます。
  • PCスキルの習得:多くの職場で必要とされるWordやExcel、PowerPointなどの基本的な使い方を、個人のレベルに合わせて習得できます。

こうした小さな成功体験を一つひとつ積み重ねていくことが、働くことへの自信につながっていきます。

「自分に合う仕事がわからない」→強みを見つける自己分析と個別計画

「どんな仕事がしたいですか?」と聞かれても、すぐには答えられないかもしれません。就労移行支援では、焦って仕事を探す前に、自分自身を深く理解する時間を大切にします。

支援の核となるのが、スタッフと一緒に作成する「個別支援計画」です。これは、あなたの得意なこと、苦手なこと、興味・関心、希望する働き方などを整理し、目標達成までの具体的なステップを描いた「あなただけの就活攻略本」とも言えるものです。

専門スタッフとの定期的な面談や、様々なプログラムへの参加、職業適性検査などを通じて、自分では気づかなかった強みや可能性を発見し、納得感のあるキャリアプランを立てていきます。

「面接や書類で落ちてしまう」→実践的な就職活動サポート

自分の強みや目指す方向性が見えてきたら、いよいよ実践的な就職活動の準備に入ります。

  • 応募書類の作成:あなたの魅力が最大限に伝わるような、履歴書や職務経歴書の書き方を丁寧にサポートします。
  • 模擬面接:面接官役のスタッフを相手に、本番さながらの練習を繰り返します。入退室のマナーから、よくある質問への答え方、障害特性の伝え方まで、具体的なフィードバックをもらいながら改善できます。
  • 企業インターン(職場実習):興味のある企業で、実際に仕事を体験できる機会です。自分に合う職場環境かどうかを確認できるだけでなく、企業側にあなたの仕事ぶりを知ってもらう絶好のチャンスにもなり、ミスマッチの少ない就職につながります。

知っておけばもっと安心|利用するための基礎知識

制度を利用するにあたって、対象者や費用など、気になる点を解説します。これらは、あなたが安心してスキルアップに集中できるための大切な情報です。

対象となる人:障害者手帳は必須?

就労移行支援は、以下の条件を満たす方が対象となります。

  • 18歳以上65歳未満の方
  • 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、または難病のある方
  • 一般企業への就職を希望し、支援を受けることで就職が見込める方

必ずしも障害者手帳の所持は必須ではありません。医師の診断書や意見書など、客観的に心身の状態が分かり、自治体がサービスの必要性を認めれば、利用できる場合があります。

利用料金と期間:集中できる環境

利用料金は、前年度の世帯所得に応じて自己負担額が定められています。しかし、国の制度であるため手厚い補助があり、実際には約9割以上の方が自己負担なし(0円)で利用しています。詳しくは、お住まいの自治体の障害福祉窓口にご確認ください。

利用できる期間は、原則として最長2年間です。この期間は、焦らずに自分のペースで就職準備に集中するための貴重な時間と捉えることができます。

就労継続支援との違い:目指すゴールで選ぶ

似た名称のサービスに「就労継続支援(A型・B型)」がありますが、目的が大きく異なります。

  • 就労移行支援:一般企業への就職を目指し、そのための訓練を行う場所。
  • 就労継続支援:事業所という福祉的なサポートのある環境で「働く」場所。

どちらが良いというわけではなく、あなたが目指す働き方によって選ぶべき道が異なります。「一般企業で働きたい」という希望があるならば、就労移行支援がそのための第一歩となります。

「就職」はゴールじゃない|入社後も続く、心強いサポート

就労移行支援の大きな価値の一つが、「職場定着支援」です。無事に就職が決まっても、そこで支援が終わりになるわけではありません。

新しい環境では、「仕事内容に慣れない」「人間関係でつまずいた」「体調管理との両立が難しい」など、新たな壁に直面することがあります。そんな時、事業所のスタッフが定期的にあなたと面談したり、あなたの許可を得て職場を訪問したりして、悩みを聞き取ります。

そして、あなたと企業の間に入り、業務量の調整や職場環境の改善などを働きかけてくれます。この「就職後も頼れる伴走者」がいるという安心感が、長く働き続けるための大きな支えとなるのです。

最初の一歩を踏み出すために

もし、この記事を読んで少しでも興味が湧いたら、具体的な行動に移してみましょう。難しく考える必要はありません。

まずは情報収集から:見学や体験利用

多くの就労移行支援事業所では、無料で見学や相談、プログラムの体験利用を受け付けています。事業所の雰囲気やスタッフの様子、通っている利用者の表情などを直接見ることで、自分に合う場所かどうかを肌で感じることができます。複数の事業所を比較検討することをお勧めします。

相談する場所:お住まいの市区町村窓口

サービスの利用申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。まずはそこで「就労移行支援を利用したい」と相談してみましょう。必要な手続きや地域の事業所について教えてくれます。

利用までの流れを簡単におさらい

  1. 事業所の見学・相談・体験
  2. 市区町村の窓口へ相談・申請
  3. サービス等利用計画案の作成
  4. 受給者証の交付
  5. 事業所との契約・利用開始

あなたの「働きたい」を、諦めないで

働くことへの不安や困難は、決してあなた一人の責任ではありません。適切なサポートや環境があれば、誰もが自分の能力を発揮して社会に貢献できる可能性があります。

就労移行支援は、その可能性を現実のものとするための、社会が用意した心強い制度です。一人で抱え込まず、専門家を頼ることは、あなたの未来を切り拓くための賢明な選択です。ぜひ、その一歩を踏み出してみてください。

この記事の筆者・監修者

筆者

Findcare編集部

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