
「すぐにフルタイムで働くのは難しいけど、社会とのつながりを持ちたい」「体調に合わせて、無理のない範囲で何か活動を始めたい」――そんな風に考えている方にとって、「就労継続支援B型」は大切な選択肢の一つになるかもしれません。
この記事では、就労継続支援B型がどのようなサービスなのか、どんな人が利用できるのか、具体的な作業内容や工賃、メリットや注意点、そして利用開始までの流れや事業所の選び方まで、詳しく解説します。あなたらしい一歩を踏み出すための情報として、ぜひお役立てください。
就労継続支援B型とは? – あなたの「働く」を無理なくサポート
就労継続支援B型は、障害や難病のある方で、一般企業などで雇用契約を結んで働くことが現時点では難しい方が、雇用契約を結ばずに、比較的簡単な作業などの就労訓練や生産活動を行うことができる福祉サービスです。
自分の体調やペースに合わせて通所し、作業を行うことで工賃を得ながら、働くことへの意欲を高めたり、生活リズムを整えたり、社会参加を目指すことを目的としています。いわば、働くためのリハビリテーションや、日中の活動の場、安心できる居場所としての役割も担っています。
【重要】就労継続支援A型との違いは?どちらが自分に合っている?
就労継続支援にはA型とB型がありますが、その違いを理解することは非常に重要です。どちらが自分に適しているか見極めましょう。
項目 | 就労継続支援B型 | 就労継続支援A型 |
---|---|---|
雇用契約 | なし | あり |
賃金/工賃 | 生産活動に対する工賃(最低賃金の定めなし) | 最低賃金以上の給料 |
利用対象者(一例) | ・就労経験があるが年齢や体力面で一般企業での就労が困難になった方 ・50歳に達している方、または障害基礎年金1級受給者 ・上記に該当しない方で、就労移行支援事業者等によるアセスメントで就労面の課題が把握されている方 |
・企業等に就労することが困難な方で、雇用契約に基づき継続的に就労することが可能な65歳未満の方(利用開始時)など |
主な目的 | 就労訓練、生産活動、居場所づくり、生活リズムの安定、社会参加 | 雇用契約に基づく就労、スキルアップ、一般就労への移行準備 |
利用の柔軟性 | 比較的高い(体調に合わせて通所日数や時間を調整しやすい) | 雇用契約があるため、一定の勤務が求められる |
年齢制限 | 特になし | 原則65歳未満(利用開始時) |
B型は、雇用契約を結ばないため、より柔軟に、ご自身の体調やペースを優先しながら利用しやすいのが大きな特徴です。「まずは働くことに慣れたい」「短時間から始めたい」という方に向いています。
どのような人が利用できるの? – 対象となる方
就労継続支援B型は、具体的に以下のような方が利用対象となります。
- 就労経験がある方で、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった方
- 50歳に達している方
- 障害基礎年金1級を受給している方
- 上記のいずれにも該当しない方で、就労移行支援事業者などによるアセスメント(評価)により、就労面にかかる課題が把握されている方(例:就労移行支援を利用したが雇用に結びつかなかった方、特別支援学校卒業後に就職活動を行ったが雇用に結びつかなかった方など)
年齢制限は特にありません。利用を希望される場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所にご相談ください。
どんな「仕事(活動)」をするの? – 多様な作業内容の例
B型事業所で行われる作業(生産活動)は非常に多様です。事業所の特色や地域性、利用者の希望や特性に応じて様々な活動が提供されています。以下はその一例です。(※実際の作業内容は事業所によって異なります)
- 軽作業系:部品の袋詰め・シール貼り、DMの封入作業、商品の検品・梱包、清掃作業、農作業(野菜の栽培・収穫など)、リサイクル作業
- 創作・制作系:手芸品(アクセサリー、小物など)の制作、パン・お菓子の製造販売、木工製品の制作、絵画・陶芸などのアート活動
- パソコン作業系:データ入力、文字起こし、アンケート集計、簡単なウェブサイト更新作業
- その他:カフェでの接客補助、地域イベントへの参加・協力、施設内の備品管理など
これらの活動を通して、作業スキルを身につけるだけでなく、集中力や持続力、コミュニケーション能力などを養うことも目指します。見学や体験利用を通じて、自分に合った作業内容や雰囲気の事業所を見つけることが大切です。
気になる「工賃」について – 金額の目安と意味合い
就労継続支援B型では、生産活動の成果に対して「工賃」が支払われます。これはA型の「給料」とは異なり、雇用契約に基づくものではないため、最低賃金の適用はありません。
厚生労働省の調査によると、令和4年度の就労継続支援B型における平均工賃(月額)は17,031円でした。ただし、これはあくまで全国平均であり、作業内容、作業時間、事業所の収益状況などによって大きく異なります。
出典:厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について」
工賃の額はA型に比べて低い傾向にありますが、B型の目的は工賃を得ることだけではありません。日中の活動の場を得て生活リズムを整えること、仲間と交流すること、社会参加を実感することなども重要な意義となります。多くの事業所では、工賃向上のための様々な取り組み(新しい仕事の開拓、販売努力など)も行われています。
工賃だけで生計を立てることは難しい場合が多いため、障害年金や生活保護など、他の福祉制度と組み合わせて利用している方もいます。
B型を利用するメリット – 自分らしくいられる理由
就労継続支援B型を利用することには、多くのメリットがあります。
- 自分のペースで通える:週1日や1日数時間からでも利用できる事業所が多く、体調や体力に合わせて無理なく始められます。
- 体調を優先しやすい:雇用契約がないため、急な体調不良などにも比較的柔軟に対応してもらえます。
- 多様な経験ができる:様々な作業内容があり、自分に合ったものや興味のあることを見つけやすいです。
- 安心できる居場所:同じような状況の仲間や理解のある支援員がいる環境で、安心して過ごせます。
- 生活リズムの確立:定期的に通所することで、生活リズムが整いやすくなります。
- 働くことへの準備:作業を通じて、集中力や持続力、コミュニケーションスキルなどを少しずつ身につけ、次のステップへの準備ができます。
- 社会とのつながり:生産活動や地域活動への参加を通じて、社会とのつながりを実感できます。
知っておきたい注意点(デメリットと感じる可能性のある点)
メリットが多いB型ですが、事前に理解しておきたい点もあります。
- 工賃が低い傾向にある:A型のような最低賃金の保障はなく、工賃だけで生活するのは難しい場合が多いです。
- 事業所による差が大きい:作業内容、工賃の水準、事業所の雰囲気、支援の質などは事業所によって大きく異なります。
- 一般就労への直接的な移行は少ない:B型は就労訓練や居場所としての側面が強いため、直接一般就労を目指す場合はA型や就労移行支援の方が適している場合があります。ただし、B型からステップアップする方もいます。
これらの点を理解し、自分の目的や状況に合っているか慎重に検討することが大切です。
利用開始までの簡単ステップ – どうやって始めるの?
就労継続支援B型の利用を開始するまでの一般的な流れは以下の通りです。
- 相談:まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所、またはハローワークの専門窓口などに相談します。
- 事業所の情報収集・見学・体験利用:興味のあるB型事業所を探し、見学や体験利用を申し込みます。複数の事業所を比較検討することが重要です。
- サービス等利用計画案の作成:相談支援事業所の相談支援専門員が、あなたの希望や状況に合った「サービス等利用計画案」を作成します。
- 支給申請・認定:市区町村にB型の利用を申請します。審査の結果、支給が決定されると「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
- 事業所との契約:利用したいB型事業所とサービス利用契約を結びます。契約内容(利用日数、時間、工賃規定など)をよく確認しましょう。
- 利用開始:いよいよB型事業所での活動がスタートします。
手続きには時間がかかる場合もあるため、早めに相談を始めることをお勧めします。
失敗しない!自分に合った事業所の見つけ方
自分に合ったB型事業所を見つけることは、安心して継続利用するために非常に重要です。以下のポイントを参考に、じっくり選びましょう。
- 作業内容:興味を持てるか、無理なく取り組めそうか? 苦痛に感じる作業ではないか?
- 事業所の雰囲気:見学や体験利用で、利用者や職員の様子、全体の雰囲気は自分に合いそうか? 活気があるか、落ち着いているかなど。
- 支援体制:困ったときに相談しやすいか? 体調への配慮はあるか? スタッフの専門性は?
- 通いやすさ:自宅からの距離、交通手段、交通費の負担はどうか?
- 利用の柔軟性:週に何日から、1日何時間から利用できるか? 欠席や早退の扱いは?
- 工賃の条件:工賃の計算方法や支払日、過去の実績などを確認する。
- 他の利用者の様子:どんな人が利用しているか、自分と合いそうかなども参考に。
必ず複数の事業所を見学し、可能であれば体験利用をしましょう。 疑問や不安な点は遠慮なく質問し、納得のいく事業所選びをしてください。
よくある質問 (FAQ)
- Q1. 毎日通わないといけませんか?
- A1. いいえ、必ずしも毎日通う必要はありません。週1日からや午前中のみ・午後のみといった短時間利用が可能な事業所も多くあります。ご自身の体調や希望に合わせて相談し、利用計画を立てることができます。
- Q2. 工賃はいつもらえますか? また、どのように支払われますか?
- A2. 工賃の支払日は事業所によって異なりますが、月末締め翌月払いが多いです。支払い方法は、銀行振込や手渡しなど、事業所ごとに定められています。契約時に確認しましょう。
- Q3. 作業が難しくてできなかったらどうしよう…
- A3. B型事業所では、個々の能力や特性に合わせて作業内容を調整したり、丁寧に指導したりする体制が整っています。初めは簡単な作業からスタートし、徐々に慣れていくことができます。不安なことは支援員に相談しましょう。
- Q4. 年齢制限はありますか?
- A4. 就労継続支援B型には、利用開始時の年齢制限は特にありません。幅広い年齢層の方が利用されています。
- Q5. B型からA型や一般就労へステップアップできますか?
- A5. はい、可能です。B型での経験を通じて自信をつけ、体調が安定してきた方の中には、A型事業所や一般就労へステップアップする方もいます。事業所によっては、そのための相談支援を行っているところもあります。
まとめ:あなたのペースで、社会とのつながりを見つけよう
就労継続支援B型は、自分の体調やペースを大切にしながら、無理なく社会参加を目指せる場所です。工賃を得るだけでなく、日中の活動の場、仲間との交流、生活リズムの安定など、多くの価値を提供してくれます。
「少しずつでも何か始めたい」「安心できる場所がほしい」そう感じているなら、まずは一歩踏み出して、お近くの相談窓口や関心のある事業所に問い合わせてみてはいかがでしょうか。あなたらしい働き方、生き方が見つかることを応援しています。
【主な相談窓口】
- 市区町村の障害福祉課(または担当窓口)
- 相談支援事業所
- ハローワークの専門援助窓口