
「自分にはどんな仕事が向いているんだろう?」「障害福祉サービスを利用したいけど、どのサービスを選べばいいか分からない…」そんな悩みを抱えていませんか? これから社会に出ようとする方、新しい働き方を探している方にとって、自分に合った道を選ぶのはとても大切なことです。
そんなあなたの「選択」をサポートするために、2025年度(令和7年度)から本格的に始まる新しい障害福祉サービスが「就労選択支援」です。この記事では、この新しいサービスがどのようなものなのか、なぜ必要なのか、どんな人が利用できるのか、具体的な支援内容やメリット、利用方法などを、分かりやすく解説していきます。
就労選択支援とは? – あなたの「働く」を見つける新しい羅針盤
就労選択支援は、障害のある方が、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)といった就労系の障害福祉サービスを利用する前に、ご本人の希望や能力、適性に合った働き方や支援内容を、支援者と一緒にていねいに考え、納得して選択できるようサポートすることを目的とした新しいサービスです。
これまでも、自分に合った仕事やサービスを選ぶための相談は行われてきましたが、就労選択支援では、より体系的で個別化されたアセスメント(評価・分析)や情報提供、相談支援を通じて、一人ひとりの「自分らしい働き方」の実現に向けた最初の重要なステップを支援します。
なぜ「就労選択支援」ができたの? – 背景と目指すもの
この新しいサービスが創設された背景には、いくつかの重要な目的があります。
- 就労ミスマッチの防止:「とりあえずこのサービスを…」と安易に選んでしまい、後から「合わなかった」となるケースを減らし、最初からより適切な選択ができるようにします。
- 本人の意思決定の尊重・支援強化:ご本人が主体的に情報を得て、考え、納得して自分の進む道を選べるように、そのプロセスを丁寧にサポートします。
- 早期離職の防止:自分に合った仕事や職場環境を選ぶことで、就職後の早期離職を防ぎ、長く安定して働き続けることにつなげます。
- 多様な働き方の選択肢の提示:一般就労だけでなく、福祉的就労も含め、その人にとって最適な働き方や社会参加の形を幅広く検討できるようにします。
つまり、就労選択支援は、障害のある方がより質の高い、納得のいく職業生活を送るための「入口」を整備するものと言えます。
誰が利用できるの? – 対象となる方
就労選択支援の主な対象となるのは、以下のような方々です。
- これから就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)などの就労系障害福祉サービスの利用を希望している方。
- 特別支援学校などを卒業後、初めて就職を目指す方。
- 離職期間があり、再就職に向けてどのようなステップを踏むか検討している方。
- その他、自分に合った働き方や必要な支援について、専門的なアドバイスや情報提供を受けたいと考えている障害のある方。
詳しい対象者の要件については、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所にご確認ください。
具体的に何をしてくれるの? – 支援のステップと内容
就労選択支援では、利用者一人ひとりの状況に合わせて、以下のようなステップで支援が進められることが想定されています。(※具体的な進め方は事業所や個人の状況により異なります)
- じっくり相談・アセスメント(あなたの希望や得意なことを一緒に整理):
まず、支援員があなたと丁寧に面談し、これまでの経験、興味や関心、得意なこと、苦手なこと、将来どんな生活を送りたいかなどをじっくりと聞き取ります。必要に応じて、作業体験や心理検査などを通じて、あなたの強みや課題を客観的に把握(アセスメント)します。これは、あなた自身も気づいていない可能性を発見する機会にもなります。 - 情報収集・提供(様々な働き方や福祉サービスの情報を提供):
アセスメントの結果やあなたの希望を踏まえ、支援員が様々な働き方の選択肢(一般就労、福祉的就労、テレワークなど)や、利用可能な就労系障害福祉サービス(就労移行支援、A型、B型など)の種類、それぞれの特徴、事業所の情報などを分かりやすく提供します。 - 体験の機会の調整(職場見学や作業体験など ※事業所による):
必要に応じて、興味のある職場や事業所の見学、短期間の作業体験などを調整し、実際の雰囲気や仕事内容を肌で感じる機会を提供してくれる場合があります。これにより、より具体的なイメージを持って選択できるようになります。 - 意思決定のサポート(あなた自身が納得して選択できるよう支援):
提供された情報や体験を通じて、あなたが「どのサービスを利用したいか」「どんな働き方を目指したいか」を主体的に考え、納得して選択できるよう、支援員が相談に乗り、一緒に考え、あなたの意思決定をサポートします。「協同的プロセス」を重視し、一方的なアドバイスではなく、あなた自身の気づきや選択を尊重します。 - 「サービス等利用計画」への反映:
あなたが選択した方向性や利用したいサービスが決まったら、その内容を「サービス等利用計画」または「障害児支援利用計画」に反映させ、実際のサービス利用につなげていきます。
既存の就労支援(移行支援、A型、B型など)との違いと流れ
就労選択支援は、既存の就労支援サービスの「前段階」に位置づけられるサービスです。これまでの流れと、就労選択支援が入った場合の流れをイメージしてみましょう。
<これまでの一般的な流れ(一例)>
相談窓口で相談 → 就労移行支援事業所などを見学・体験 → 利用開始 → 就職活動
<就労選択支援が加わった後の流れ(イメージ)>
相談窓口で相談 → 【就労選択支援】(アセスメント、情報提供、意思決定支援) → より自分に合った就労移行支援事業所やA型・B型事業所などを選択 → 利用開始 → 就職活動
このように、就労選択支援を経ることで、より多角的な視点から自分に合ったサービスや働き方を見極め、ミスマッチを防ぎながら次のステップに進むことが期待されます。
就労選択支援を利用するメリットは?
この新しいサービスを利用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- より自分に合った選択ができる:自分の強みや希望を深く理解した上で、多様な選択肢の中から最適なものを選びやすくなります。
- 就労ミスマッチを防げる:「思っていたのと違った」というミスマッチを減らし、安心してサービス利用や就労を開始できます。
- 納得感を持って次に進める:支援員と協同で考え、自分で選択するプロセスを経ることで、主体的に、そして納得感を持って次のステップに進めます。
- 早期離職のリスク軽減:自分に合った環境で働くことで、就職後の早期離職のリスクを減らし、長期的なキャリア形成につながります。
- 多様な可能性に気づける:自分一人では気づかなかった得意なことや、知らなかった働き方、支援サービスに出会える可能性があります。
利用開始までの手続きと相談窓口
就労選択支援の利用を希望する場合、まずは以下の窓口に相談してみましょう。
- お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口
- 相談支援事業所(既に担当の相談支援専門員がいる場合はその方に)
- ハローワークの専門援助窓口
これらの窓口で、就労選択支援の利用について相談し、対象となるか、どのような事業所があるかなどの情報を得て、手続きを進めていくことになります。具体的な手続きの流れは、お住まいの自治体にご確認ください。
知っておきたいQ&A
- Q1. 就労選択支援の利用に費用はかかりますか?
- A1. 障害福祉サービスの一環として提供されるため、原則として自己負担は無料または低額です。世帯の所得に応じて利用者負担上限月額が設定されますが、多くの場合、負担なく利用できる見込みです。詳しくは市区町村の窓口でご確認ください。
- Q2. どのくらいの期間利用できるのですか?
- A2. 短期間(例えば1~2ヶ月程度)で集中的に行われることが想定されていますが、個々の状況に応じて必要な期間が設定される見込みです。具体的な期間については、制度の詳細や事業所の方針によって定められます。
- Q3. 就労選択支援は必ず利用しなければならないのですか?
- A3. 現時点では、就労系サービスの利用前に必ず経なければならない「必須」のサービスとはされていません。しかし、自分に合った選択をするために非常に有効な支援ですので、積極的に活用を検討することをおすすめします。特に、どのサービスを利用すべきか迷っている方にとっては大きな助けとなるでしょう。
- Q4. 2025年度からとありますが、すぐにどこでも利用できますか?
- A4. 2025年度から本格実施が見込まれていますが、新しい制度のため、開始当初は事業所の数や地域による体制整備の状況に差が出る可能性があります。お住まいの地域の情報を確認することが大切です。
まとめ:あなたの「納得のいく選択」を、新しい支援が後押しします
2025年度から始まる「就労選択支援」は、障害のある方が自分らしい働き方や必要なサポートを主体的に選び取るための、新しい羅針盤となるサービスです。これまで「どうしたらいいかわからない」と一人で悩んでいた方も、専門の支援員と一緒にじっくり考え、情報を得ることで、きっと新たな道が見えてくるはずです。
まだ始まったばかりの制度ではありますが、あなたらしいキャリアの第一歩を、より確かなものにするために、ぜひこの新しい支援の活用を検討してみてはいかがでしょうか。まずは、お近くの相談窓口に「就労選択支援について知りたい」と問い合わせてみましょう。
【主な相談窓口】
- 市区町村の障害福祉課(または担当窓口)
- 相談支援事業所