「そろそろ、親のこれからのことを考え始めなきゃな…」
「でも、老人ホームって色々あるけど、何がどう違うんだろう?」
「うちの親には、どんな施設が合うのかな…費用も心配だし…」
でも、いざ「介護施設」について調べてみると、「特養」「老健」「サ高住」…なんて、知らない言葉がたくさん出てきて、頭がごちゃごちゃになってしまいますよね。そのお気持ち、すごくよく分かります。
でも、もう安心してください。
この記事は、そんなあなたのための「道しるべ」です。たくさんの種類がある介護施設の違いをスッキリ整理して、「私たちの場合は、この施設が合ってるかも!」という道筋が、きっと見えてきますよ。
一つひとつ、確認していきましょう。
3つの質問でわかる!あなたにピッタリの施設タイプ診断
詳しい解説に入る前に、まずは簡単な質問に答えるだけで、あなたのご家族に合いそうな施設タイプの方向性を見てみましょう!
Q1. 現在の介護の必要度はどれくらいですか?
(A) まだ元気で、基本的には自立して生活できる。
(B) 少し手助けが必要なことがある。(要支援レベル)
(C) 日常的に介護が必要な状態。(要介護1~5レベル)
Q2. 施設に入る一番の目的は何ですか?
(A) 元気なうちから、仲間と楽しく安全に暮らしたい。
(B) 退院後、自宅に戻るために集中的にリハビリをしたい。
(C) 認知症の専門的なケアを受けながら、穏やかに暮らしたい。
(D) 介護や医療のサポートを受けながら、安心して長く暮らしたい。
Q3. 予算はどれくらいを考えていますか?
(A) できるだけ費用は抑えたい。親の年金の範囲内が理想。
(B) ある程度の費用は覚悟している。サービス内容を重視したい。
どうでしょう? もしあなたが、
- **「C・D・A」**に近いなら… 特別養護老人ホーム(特養)
- **「C・B・A」**に近いなら… 介護老人保健施設(老健)
- **「C・D・B」**に近いなら… 介護付き有料老人ホーム
- 「A・A・B」に近いなら… 住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- **「C・C・A」**に近いなら… グループホーム
といった可能性が考えられます。
もちろん、これはあくまで簡単な目安です。 「なるほど、うちはこっちの方向性かな?」と、なんとなく当たりをつけられたら、もうバッチリ!
それでは、全体像をつかむために、まずは大きな違いから見ていきましょう。
まず理解すべき2つの道:公的施設と民間施設の違い
介護施設は、運営しているのが誰かによって、大きく**「公的施設」と「民間施設」**の2つに分かれます。 この違いを知っておくだけで、グッと理解が深まりますよ。
施設の種類 | 公的施設 | 民間施設 |
運営 | 自治体や社会福祉法人など | 民間の株式会社など |
メリット | 費用が安い | 選択肢が豊富で、サービスが多彩 |
デメリット | 人気で入居待ちが多い傾向 | 公的施設よりは費用がかかる傾向 |
主な施設 | 特養、老健、介護医療院、ケアハウスなど | 有料老人ホーム、サ高住、グループホームなど |
ざっくり言うと、費用を抑えたいなら「公的施設」、入居のしやすさやサービスの多様性を重視するなら「民間施設」、というイメージですね。
この基本だけ頭の片隅に置いておけば、もう大丈夫です。 それでは、いよいよ各施設を詳しく比較していきましょう。
介護施設・老人ホームの比較表
これから解説する11種類の施設について、皆さんが気になるポイントを一覧表にまとめました。 「こんなにたくさんあるんだ!」と驚くかもしれませんが、この表を見ればそれぞれの個性や違いが一目瞭然です。
施設種類 | 運営主体 | こんな方におすすめ | 入居条件(要介護度) | 費用目安(初期) | 費用目安(月額) | 主なサービス内容 | 終身利用 | 待機期間 |
【公的】特別養護老人ホーム(特養) | 公的 | 高い介護度で費用を抑え、終身利用したい方 | 原則要介護3以上 | 0円 | 8~15万円 | 介護、生活支援、看取り | ◯ | 長い |
【公的】介護老人保健施設(老健) | 公的 | 在宅復帰を目指し、集中的なリハビリをしたい方 | 要介護1以上 | 0円 | 10~20万円 | 介護、医療ケア、リハビリ | × | 短い |
【公的】介護医療院 | 公的 | 長期的な医療ケアと介護の両方が必要な方 | 要介護1以上 | 0円 | 9~17万円 | 介護、医療ケア、看取り | ◯ | 短い~中 |
【公的】ケアハウス(軽費老人ホーム) | 公的 | 自立~軽度の要介護で、生活支援を受けたい方 | 自立~要介護 | 0~数十万円 | 6~17万円 | 食事、生活支援、介護(介護型) | △ | 長い場合も |
【公的】養護老人ホーム | 公的 | 経済的・環境的な理由で居宅での生活が困難な方 | 自立 | 0円 | 0~14万円 | 生活支援 | △ | 長い |
【民間】介護付き有料老人ホーム | 民間 | 手厚い介護サービスを24時間受け、安心して暮らしたい方 | 自立~要介護5 | 0~数千万円 | 15~35万円 | 介護、生活支援、医療ケア、アクティビティ | ◯ | 短い |
【民間】住宅型有料老人ホーム | 民間 | 必要なサービスを自分で選び、自由な生活を送りたい方 | 自立~要介護5 | 0~数千万円 | 12~30万円 | 生活支援、アクティビティ(介護は外部契約) | ◯ | 短い |
【民間】健康型有料老人ホーム | 民間 | 自立しており、アクティブなシニアライフを楽しみたい方 | 自立 | 数百万~数千万円 | 15~40万円 | 食事、生活支援、娯楽設備 | × | 短い |
【民間】サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 民間 | 自立した生活を送りつつ、安否確認や生活相談を受けたい方 | 自立~要介護 | 0~数十万円 | 10~25万円 | 安否確認、生活相談(介護は外部契約) | ◯ | 短い |
【民間】グループホーム | 民間 | 認知症の方が家庭的な環境で共同生活を送りたい方 | 要支援2以上、認知症 | 0~数十万円 | 12~20万円 | 認知症ケア、介護、生活支援 | ◯ | 短い~中 |
【民間】シニア向け分譲マンション | 民間 | 資産として所有し、アクティブな生活を送りたい方 | 自立 | 数千万~数億円 | 管理費等 | 生活支援サービス、共用施設 | ◯ | – |
どうでしょう? この表を横に見ながら、それぞれの施設の特徴を詳しく見ていくと、さらに理解が深まりますよ!
【施設タイプ別】詳しい解説|費用・特徴・メリット/デメリット
ここからは、各施設について一つひとつ丁寧に解説していきます。
【公的施設①】特別養護老人ホーム(特養)
ひとことで言うと… **「費用を抑えて、終身利用もできる、介護の拠点」**です。「終の棲家(ついのすみか)」なんて呼ばれることもありますよ。
- どんな人向け?
- とにかく費用を抑えたい
- 常に介護が必要な状態(要介護3以上)
- 一度入居したら、長く暮らせる場所を探している
- どんな人には向かない?
- すぐに入居したい人(待機者が多い)
- 要介護度が低い人
- 費用の内訳
- 初期費用:0円
- 月額費用:8~15万円程度
- 公的施設なので入居一時金は不要。費用は部屋のタイプ(相部屋か個室か)や所得によって変わります。
- サービスと日常生活
- 食事、入浴、排泄などの身体介護が中心です。生活を支えるサービスがメインで、看取りまで対応してくれる施設が多いのが特徴です。
- メリット・デメリット
- メリット: なんといっても費用が安いこと。終身利用できる安心感も大きいです。
- デメリット: 人気のため待機者が非常に多く、すぐに入れないことが多いです。
特養は待機期間が長いことが多いので、**まず複数の施設に申し込みだけしておく「ハイブリッド戦略」**がおすすめです。待っている間に、一時的に他の施設(例えば住宅型有料老人ホームなど)を利用しながら、本命の特養の空きを待つ、という作戦ですね。
【公的施設②】介護老人保健施設(老健)
ひとことで言うと… **「病院から退院した後、自宅での生活に戻るためのリハビリ施設」**です。ずっと住む場所ではないのが特養との大きな違いです。
- どんな人向け?
- 骨折などで入院し、退院したばかり
- 自宅に帰る前に、集中的にリハビリをしたい
- 在宅介護をしている家族が、一時的に休息をとりたい時(ショートステイ)
- どんな人には向かない?
- 長期的に住む場所を探している人
- リハビリよりも、日々の生活サポートを重視する人
- 費用の内訳
- 初期費用:0円
- 月額費用:10~20万円程度
- リハビリの内容や部屋のタイプによって費用が変わります。
- サービスと日常生活
- 医師や看護師、理学療法士といった専門スタッフが常駐し、本格的なリハビリが受けられます。医療ケアも手厚いのが特徴です。
- メリット・デメリット
- メリット: 医療・リハビリ体制が非常に充実しています。
- デメリット: 入居は原則3~6ヶ月。あくまで「中間施設」なので、退去後の生活を考えておく必要があります。
退院が迫ってから慌てないように、入院中からソーシャルワーカーさんと相談して、老健を探し始めるのがスムーズですよ。
【民間施設①】介護付き有料老人ホーム
ひとことで言うと… **「介護サービスがセットになった、ホテルライクな暮らしができる施設」**です。24時間スタッフが常駐していて、手厚い介護を受けられるのが最大の魅力です。
- どんな人向け?
- 夜間でも介護が必要など、手厚いサポートを求めている
- レクリエーションやイベントなど、充実した生活を送りたい
- ある程度の費用はかかっても、安心できる環境を選びたい
- どんな人には向かない?
- 費用をできるだけ抑えたい人
- まだ介護は不要で、自由な生活を続けたい人
- 費用の内訳
- 初期費用:0円~数千万円以上と幅広い
- 月額費用:15~35万円程度
- 「介護付き」なので、月額費用に介護サービス費が含まれていることが多いです(介護保険の自己負担分は別途必要)。
- サービスと日常生活
- 食事や入浴といった生活全般のサポートから、介護スタッフによる24時間のケアまで非常に手厚いのが特徴。アクティビティも豊富です。
- メリット・デメリット
- メリット: 介護体制が充実しており、サービスが豊富で安心感が高いです。
- デメリット: やはり費用が高額になりがちです。
施設によって雰囲気や特色が全く違います。費用だけで判断せず、いくつか見学して、本人や家族が「ここなら楽しく暮らせそう」と感じる場所を選ぶのが一番大切ですよ。
【民間施設②】住宅型有料老人ホーム
ひとことで言うと… **「自由な暮らしと、必要な介護を組み合わせられる、選択肢の多い住まい」**です。イメージとしては、生活サポート付きのマンションに近いかもしれません。
- どんな人向け?
- まだ元気で、外出や趣味など、自分らしい生活を続けたい
- 介護は必要だけど、デイサービスなど外部のサービスを自由に選びたい
- 将来、介護が必要になった時のために備えておきたい
- どんな人には向かない?
- 常に介護が必要で、24時間見守りがないと不安な人
- 毎月の費用を完全に固定したい人(外部サービスの利用状況で変動するため)
- 費用の内訳
- 初期費用:0円~数百万円程度
- 月額費用:12~30万円程度 + 外部の介護サービス費
- 施設が提供するのは生活支援まで。介護が必要な場合は、外部の訪問介護などと別途契約します。
- サービスと日常生活
- 食事の提供や安否確認、生活相談が基本サービス。レクリエーションが充実している施設も多いです。
- メリット・デメリット
- メリット: 必要なサービスを自分で選べるので自由度が高いです。
- デメリット: 介護サービスの利用が増えると、費用が「介護付き」より高くなる可能性があります。
【要注意!】このタイプの施設は、将来介護がたくさん必要になった時に、月々の費用が予想以上に膨らむ可能性があります。「今は元気だから安い」という理由だけで選ぶのではなく、将来介護度が上がった場合の費用シミュレーションを必ず確認しましょう!
【民間施設③】サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
ひとことで言うと… **「安否確認と生活相談サービスが付いた、高齢者向けの賃貸住宅」**です。有料老人ホームよりも、さらに「自宅」に近い感覚で暮らせるのが特徴です。
- どんな人向け?
- 基本的には元気で、一人暮らしは続けたい
- でも、何かあった時のために見守りサービスがあると安心
- バリアフリーの整った家に住みたい
- どんな人には向かない?
- 手厚い介護や頻繁な生活支援を必要とする人
- 他の入居者との交流を積極的に楽しみたい人(施設によります)
- 費用の内訳
- 初期費用:0円~数十万円(敷金のようなもの)
- 月額費用:10~25万円程度 + 外部の介護サービス費
- 住宅型と同じく、介護が必要な場合は外部サービスと契約します。
- サービスと日常生活
- 法律で義務付けられているのは「安否確認」と「生活相談」のみ。食事サービスなどはオプションの場合が多いです。基本的には自由な暮らしです。
- メリット・デメリット
- メリット: 一般の賃貸に近い感覚で、プライバシーを保ちながら自由に暮らせます。
- デメリット: 住宅型と同様、介護サービスの利用が増えると費用がかさむ可能性があります。
サ高住は「自立した方向け」というイメージが強いですが、最近は看取りまで対応する「介護型」のサ高住も増えています。選択肢が広がっているので、先入観を持たずに探してみるのがおすすめです。
【民間施設④】グループホーム
ひとことで言うと… **「認知症の方が、少人数で家庭的な雰囲気の中、共同生活を送る場所」**です。専門知識を持ったスタッフのサポートを受けながら、穏やかに暮らすことを目的としています。
- どんな人向け?
- 医師から認知症と診断されている
- 大人数の施設だと、落ち着いて過ごせないかもしれない
- 料理や掃除など、できることは自分でやりながら生活したい
- どんな人には向かない?
- 認知症の診断を受けていない人
- 集団生活が苦手な人
- 費用の内訳
- 初期費用:0円~数十万円程度
- 月額費用:15~20万円程度
- サービスと日常生活
- 5~9人程度のユニット単位で、スタッフと一緒に食事の支度をしたり、掃除をしたりと、アットホームな共同生活を送ります。認知症ケアの専門家がいるので安心です。
- メリット・デメリット
- メリット: 認知症に特化した専門的なケアを受けられます。家庭的な環境で落ち着いて過ごせます。
- デメリット: 入居条件として**「施設の所在地と同じ市区町村に住民票があること」**が必須です。
グループホームは、スタッフさんや他の入居者さんとの相性がとても大切です。必ず見学や体験入居をして、本人が「ここにいたい」と思えるかどうかを確認してあげてくださいね。
※この他にも、「介護医療院」「ケアハウス」「養護老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」「シニア向け分譲マンション」など、様々な特徴を持つ施設があります。詳しくは先ほどの比較表でチェックしてみてくださいね。
「違いがわからない」を解消!よくある疑問に専門家が回答
ここまで見てきて、「うーん、やっぱり似ていて難しいな…」と感じる部分もありますよね。 特に皆さんが混乱しやすいポイントを、Q&A形式でスッキリ解説します!
Q1. 「特養」と「有料老人ホーム」結局どっちがいいの?
A. これは**「費用」と「入居までのスピード・サービス」のどちらを優先するか**、という永遠のテーマですね。
- 特養: とにかく費用を抑えたいなら第一候補。でも、すぐには入れない覚悟が必要。
- 有料老人ホーム: 費用はかかるけど、すぐに入れてサービスも多彩。安心感を買うイメージ。
この2つを天秤にかけて、ご家族の状況に合う方を選ぶのが基本になります。
Q2. 「老健」と「介護医療院」って、どっちも医療系だけど何が違うの?
A. 目指すゴールが全く違います!
- 老健: 「在宅復帰」がゴールのリハビリ施設。いわば自宅への「橋渡し」です。
- 介護医療院: 「長期的な医療・介護」がゴールの生活施設。医療ケアを受けながら暮らす「住まい」です。
退院後の選択肢として、この違いはしっかり押さえておきましょう。
Q3. 「サ高住」と「住宅型有料老人ホーム」が一番わからない!
A. ここ、一番難しいですよね!ポイントは**「契約形態」と「自由度」**です。
- サ高住: 基本は「賃貸契約」。自宅に近い感覚で、より自由度が高いです。
- 住宅型: 「利用権契約」が多く、レクリエーションなど施設としてのサービスがより充実していることが多いです。
サ高住の方がより「住まい」、住宅型の方がより「施設」に近い、と考えると分かりやすいかもしれません。
まとめ:焦らなくて大丈夫。まずは「知る」ことから始めよう!
お疲れ様でした! たくさんの種類の介護施設があって、最初は戸惑ったかもしれませんが、一つひとつの特徴を見ていくと、違いがクリアになってきませんか?
大切なのは、「完璧な施設をいきなり見つけよう!」と焦らないことです。
まずは、今回知った知識をもとに、
「うちは費用を重視したいから、まずは特養を調べてみようかな」 「お母さんはまだ元気だから、サ高住みたいな自由な場所がいいかも」
と、家族に合いそうな施設の方向性を考えるところからスタートすれば、それで十分満点です。
そして、もし興味のある施設が見つかったら、ぜひ一度**「見学」**に行ってみることを心からお勧めします。資料だけでは分からない、施設の雰囲気やスタッフさんの人柄に触れることが、何よりも大切ですよ。
一人で抱え込まず、ご家族やケアマネージャーさんといった専門家にも相談しながら、一歩ずつ進んでいってくださいね。 この記事が、あなたのその大切な一歩を、少しでも後押しできたら嬉しいです。