画像3枚目 │ 障害者の就労支援サービス5種を徹底比較!公的データでわかる、あなたに最適な選び方

障害があって働きたいけれど、どんな選択肢があるのかわからない…

『就労移行支援』のほかにも似た名前のサービスがあって、違いが複雑で混乱してしまう…

自分にとって最適な一歩を踏み出すために、信頼できる情報がほしい

このように、働く意欲はあっても、複雑な制度を前にして一歩を踏み出せずにいる方は少なくないでしょう。ご安心ください。その悩みや不安は、あなた一人だけのものではありません。

この記事は、単にサービスの種類を一覧にするだけでなく、公的なデータに基づいて「どのサービスが、どのような結果に繋がるのか」を明確に示し、利用申請の具体的な手順から費用まで、あなたが知りたい情報のすべてを網羅した完全ガイドです。

この記事を最後まで読めば、まるで専門家と一緒に地図を広げるように、あなた自身の状況と希望に合った最適な道筋がはっきりと見え、自信を持って次の一歩を踏み出せるようになります。


まずは全体像を把握!障害者向け就労支援サービスの5つの柱

障害のある方の「働きたい」という想いを支える国の就労支援サービスは、大きく5つの柱で構成されています。まずは、それぞれのサービスが一目で比較できる以下の表で、全体像を掴みましょう。特に「一般就労への移行率」のデータは、あなたの目的とサービスを合致させる上で重要な指標となります。

▼就労支援サービス徹底比較表

サービス名目的を一言で言うと…主な対象者雇用契約給与・工賃年齢・期間制限一般就労への移行率(全国平均)
就労移行支援一般企業への就職と職場定着を目指すトレーニング一般企業への就職を希望する65歳未満の方なし原則なし原則2年以内57.2% ¹
就労継続支援A型雇用契約を結び、支援を受けながら安定して働く企業等での就労が困難だが、雇用契約に基づき就労可能な方あり給与(最低賃金以上)原則65歳未満26.2% ¹
就労継続支援B型雇用契約を結ばず、自分のペースで働く訓練雇用契約に基づく就労が困難な方なし工賃制限なし10.7% ¹
就労定着支援就職後の職場定着をサポートし、長く働き続ける就労移行支援等を利用して一般就労した方なしなし最長3年(利用者の1年後定着率を76.0%に向上させる) ¹
地域障害者職業センター / なかぽつ仕事と生活の悩みをワンストップで相談できる専門機関就職や職場復帰、仕事と生活に課題を抱える方なしなし制限なし(相談機関のため、直接の移行率はなし)

¹ 出典: 厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について」「障害者の就労支援対策の状況」

一見似ているサービスも、目指すゴール働き方、そして実績データが大きく異なることがわかります。次章から、一つひとつのサービスを詳しく見ていきましょう。


① 一般企業への就職を目指すトレーニングジム【就労移行支援】

「将来的に、スキルを身につけて一般企業で働きたい」と考えている方にとって、最も中心的かつ効果的な選択肢が就労移行支援です。

就労移行支援は、いわば「就職に向けた準備を整えるトレーニングジム」。すぐに就職活動を始めるのではなく、PCスキルやビジネスマナー、コミュニケーションといった働くために必要な知識やスキルを体系的に学び、自信を持って社会に出るための土台を築きます。

最大の注目点はその実績です。厚生労働省のデータによると、就労移行支援を利用した方の一般企業への就職率は57.2%¹。これは他のサービスと比較して突出して高く、一般就労への最も確かなルートであることを示しています。

  • 目的: 一般企業への就職、および就職後の職場定着。
  • 対象者: 一般企業への就職を希望する65歳未満の障害のある方で、就職に必要な知識・能力の向上が見込まれる方。
  • 主な支援内容: 職業訓練、自己分析、企業実習、就職活動サポート、就職後の定着支援まで、就職の全プロセスを伴走します。

【関連記事】 「就労移行支援」とは?お金はかかる?本当に就職できる?あなたの疑問、全部解説します!│サービス内容、料金、対象者、就労継続支援との違い、失敗しない事業所の選び方まで、あなたの疑問に全てお答えします。


② サポートを受けながら働く経験を積む【就労継続支援A型・B型】

「いきなり一般企業は不安…」「まずは支援のある環境で、自分のペースで働くことに慣れたい」という方には、就労継続支援という選択肢があります。このサービスは、働き方が大きく異なるA型とB型の2種類に分かれます。

就労継続支援A型(雇用型):雇用契約を結んで安定して働く

A型は、事業所と雇用契約を結んで働くのが最大の特徴です。そのため、労働者として最低賃金以上の給与が保証され、社会保険の加入対象となる場合もあります。安定した収入と労働経験を得たい方に適しています。

  • 働き方の特徴: 雇用契約あり、給与(最低賃金以上)、週20時間以上の勤務が多い。
  • 一般就労への移行率: 26.2%¹。A型で経験を積み、自信をつけてから一般就労を目指す方もいます。

就労継続支援B型(非雇用型):自分のペースで働く訓練を

B型は、雇用契約を結びません。そのため、週1日や1日数時間からなど、ご自身の体調や体力に合わせて非常に柔軟に通えるのが特徴です。行った作業に対しては「工賃」が支払われます。まずは社会との繋がりを持ち、働くリズムを作りたいという方に選ばれています。

  • 働き方の特徴: 雇用契約なし、工賃、柔軟なスケジュール。
  • 一般就労への移行率: 10.7%¹。令和4年度の全国平均工賃は月額17,031円となっており、収入を得ることよりも、日中の居場所や活動の機会としての役割が大きいです。

③ 就職後も安心!長く働き続けるための伴走者【就労定着支援】

就職はゴールではなく、スタートです。新しい環境での人間関係や仕事のプレッシャーなど、働き始めると新たな悩みが出てくることも少なくありません。就労定着支援は、そんな「就職後」の不安に寄り添い、長く働き続けるためのサポートを提供するサービスです。

この支援の価値は、データが明確に示しています。就労移行支援などを利用して就職した人の1年後の職場定着率は、就労定着支援を利用した場合76.0%に達するのに対し、利用しない場合は52.7%¹に留まります。

  • 目的: 就職後の職場定着を支援し、職業生活の安定を図る。
  • 対象者: 就労移行支援などを利用して、一般企業に就職した障害のある方。
  • 利用期間: 就職後6ヶ月が経過した後から利用開始でき、最長で3年間サポートを受けられます。(※就職後最初の6ヶ月間は、利用していた就労移行支援事業所が定着支援を行います)
  • 主な支援内容: 専門の支援員が定期的な面談を行い、本人と企業の間に立って、仕事の悩みや生活上の課題解決をサポートします。

④ 地域の総合相談窓口【地域障害者職業センター & なかぽつ】

これまでに紹介したサービスは主に「事業所」に通って利用するものでしたが、より広い視点から就労を支える公的な「相談機関」も存在します。

  • 地域障害者職業センター: ハローワークと連携し、専門的な職業リハビリテーションを提供します。「自分にどんな仕事が向いているか客観的に評価してほしい」といった場合に、カウンセリングや作業検査を通じた職業評価や、職場に支援員が訪問するジョブコーチ支援などを受けられます。
  • 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ): その名の通り、「就業(仕事)」と「生活」の両面から一体的な支援を行う、最も身近な相談窓口です。「仕事を探したいけど、まずは生活リズムを整えることから相談したい」といった、仕事と暮らしの悩みが密接に結びついている場合に、地域の様々な機関と連携してサポートしてくれます。

データと目的で選ぶ!あなたに最適な就労支援サービスの選び方ガイド

ここまで見てきたように、各サービスには明確な役割と実績の違いがあります。以下のガイドを参考に、ご自身の目標に最も合ったサービスを見つけましょう。

  • 主な目標が「一般企業への就職」なら…
    → まずは就労移行支援を検討するのが最も効果的なルートです。高い就職率がその有効性を物語っています。複数の事業所を見学し、自分に合ったプログラムや雰囲気の場所を探しましょう。
  • 「まずは自分のペースで働くことに慣れたい」なら…
    就労継続支援A型・B型が選択肢になります。安定した収入や社会保険加入を目指すならA型、体調を最優先に柔軟な働き方をしたいならB型が適しています。
  • 「客観的な自己分析や専門家の助言がほしい」なら…
    → お近くの地域障害者職業センターに相談してみましょう。専門的な職業評価が、あなたの強みや課題を明確にしてくれます。
  • 「仕事だけでなく、生活全体の不安も相談したい」なら…
    障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)が最適です。暮らしの土台を安定させながら、就職に向けたサポートを受けられます。

▼あなたに合った事業所を見つけるためのチェックリスト

サービスの種類を決めたら、次は具体的な「事業所」選びです。見学や相談の際には、以下のチェックリストを活用して、ご自身のニーズと合っているかを体系的に確認しましょう。後悔のない選択をするための重要なステップです。

カテゴリチェック項目
プログラム内容□ PCスキル(Word, Excelなど)の訓練があるか
□ コミュニケーション能力向上のためのプログラムがあるか
□ 希望する職種に関連する専門スキルを学べるか
□ 企業での実習(インターンシップ)の機会があるか
スタッフ・雰囲気□ 自身の障害特性に詳しい専門スタッフがいるか
□ スタッフとの個別相談の時間が十分に確保されているか
□ 事業所全体の雰囲気(静か、活気があるなど)が自分に合っているか
□ 他の利用者との交流の機会はどの程度あるか
実績・サポート□ 就職率と、特に職場定着率を公開しているか
□ 希望する業界や職種への就職実績があるか
□ 応募書類の添削や面接練習など、就職活動のサポートは手厚いか
□ 就職後の定着支援に力を入れているか
通いやすさ□ 自宅から無理なく通える距離・交通手段か
□ 交通費の補助制度があるか
□ 在宅での訓練やオンラインプログラムの選択肢があるか
□ 週3日など、柔軟な通所スケジュールに対応可能か

利用者様の声:体験談から学ぶ

データや説明だけでは伝わらない、実際の利用者の経験談をご紹介します。

「Aさん」事務職への移行(就労移行支援を利用)「人と話すのが苦手で、ずっと自信がありませんでした。就労移行支援のグループワークで意見を言う練習を重ね、PCスキルも基礎から学べたことで、『自分にもできる』と思えるように。特に企業実習で『ありがとう』と言われた経験が大きな自信になり、希望だった事務職に就職できました。」

「Bさん」持続可能なペースの発見(就労継続支援B型を利用)「以前、一般就労に挑戦しましたが、ストレスで体調を崩してしまいました。B型事業所に週2日から通い始め、軽作業を通じて自分のペースで働くリズムを取り戻しています。工賃は多くありませんが、ここに来れば仲間がいて、自分の役割がある。それが今の私にとって何よりの支えです。」

「Cさん」B型の現実と意義(就労継続支援B型を利用)「正直、工賃だけでは生活できませんし、作業が単調に感じることもあります。でも、家に引きこもっていた頃を思えば、決まった時間に起きて外出する目的があるだけで大きな進歩です。ここでの経験が、いつか次のステップに進むための自信に繋がればと思っています。」


具体的な手続きの流れを解説!利用開始までの7ステップ

「利用したいサービスが決まったけど、どうすればいいの?」という方のために、申請から利用開始までの具体的な流れを解説します。

  1. 相談: まずは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談します。
  2. 事業所探しと見学: 候補となる事業所を探し、見学や体験利用をして自分に合うか確認します。
  3. 「障害福祉サービス受給者証」の申請: 利用したい事業所が決まったら、市区町村の窓口でサービスの利用申請を行い、「障害福祉サービス受給者証」の交付を申請します。
  4. 認定調査: 市区町村の職員などによる聞き取り調査(アセスメント)が行われます。
  5. サービス等利用計画案の作成: 相談支援事業者が、あなたの希望や目標をまとめた「サービス等利用計画案」を作成し、市区町村に提出します。
  6. 受給者証の交付: 計画案が適切と判断されると、受給者証が交付されます。申請から交付までは1〜2ヶ月程度かかるのが一般的です。
  7. 事業所との契約・利用開始: 受給者証が届いたら、事業所と利用契約を結び、サービスの利用がスタートします。

費用の不安を解消!利用料金と負担軽減の仕組み

就労支援サービスの利用料金は、9割を国と自治体が負担し、自己負担は原則1割となります。

さらに、ご自身の所得に応じて月々の負担上限額が定められているため、利用した日数に関わらず、それ以上の費用はかかりません。多くの方が無料で利用されています。

世帯の所得状況負担上限月額
生活保護受給世帯¥0
市町村民税非課税世帯¥0
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※¥9,300
上記以外¥37,200

※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く。

ご自身の区分がわからない場合は、市区町村の障害福祉窓口で確認できます。


まとめ:一人で悩まず、データと専門家を頼りに、最適な一歩を

今回は、障害のある方が利用できる5つの主要な就労支援サービスについて、その目的や実績データ、選び方から手続きまでを網羅的に解説しました。

  • 就労支援には5つの大きな柱があり、それぞれ役割と実績が異なる。
  • 一般就労を目指すなら、就職率57.2%の「就労移行支援」が最も効果的な選択肢。
  • 就職後の定着率を大幅に高める「就労定着支援」という心強いサポートも存在する。
  • サービスや事業所を選ぶ際は、データや客観的なチェックリストを参考にすることが重要。
  • 費用には手厚い軽減措置があり、多くの方が無料で利用している。

多くの選択肢があることに、最初は戸惑うかもしれません。しかしそれは、あなたの「働きたい」という気持ちを支える仕組みが、それだけ豊富に用意されていることの証です。

最も大切なのは、一人で抱え込まず、専門家を頼ること。この記事で気になるサービスが見つかったら、ぜひ最初の一歩として、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に問い合わせてみてください。

専門の支援員に相談することで、きっとあなたの希望を形にするための具体的な道筋が見えてくるはずです。あなたらしい働き方が見つかることを、心から応援しています。