
悩んでいる
Cさん
障害があって、そろそろ働きたいなと思ってるんだけど、「就労支援」って色々種類があってよく分からない…。A型?B型?移行?何が違うの?自分はどれを選べばいいんだろう…。
「今の支援サービスは、自分に合っていないかもしれない…」 「訓練だけでなく、もっと実践的に働きながらスキルアップしたい」 「A型やB型という言葉は聞くけど、何が違うのか、どれを選べばいいのか分からない…」
もしあなたが今、このような悩みや疑問を抱えているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
障害のある方が自分らしく働くための選択肢は一つではありません。しかし、制度が複雑に感じられたり、情報が多すぎて混乱してしまったりすることもあるでしょう。ご自身の状況や目指す未来に合わないサービスを選んでしまうと、本来持っている力を十分に発揮することが難しくなってしまいます。
この記事では、数多くの就労支援に携わってきた専門家の監修のもと、「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」という3つの主要な福祉サービスについて、その違いを誰にでも分かりやすく、そして深く解説します。
単なる制度説明に留まらず、具体的な利用料金や申請手続きの流れ、就職後のサポート体制、失敗しない事業所の選び方まで、あなたが本当に知りたい情報を網羅しました。
この記事を最後まで読めば、あなたに本当に合ったサービスがどれなのかを自信を持って判断し、次の一歩を踏み出すための具体的な道筋が見えてくるはずです。
この記事でわかること
- 「就労移行支援」「A型」「B型」の目的や給料の違いが一目でわかる!
- どんな人がそれぞれのサービスに向いているかがわかる!
- 簡単な質問に答えるだけで、あなたにおすすめのサービスがわかる!
一目でわかる!3つの就労支援サービス比較表
まずは、3つのサービスがそれぞれどのような特徴を持つのか、重要なポイントを一覧表で比較してみましょう。ここを見るだけで、全体像を素早く掴むことができます。
比較項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
最大の目的 | 一般企業への就職 | 支援環境下で雇用されて働く | 自分のペースで働き、工賃を得る |
位置づけ | 就職のための「訓練・準備の場」 | 支援付きの「職場」 | 無理なく始められる「活動・作業の場」 |
雇用契約 | なし | あり | なし |
報酬 | 原則なし | 給与(最低賃金以上) | 工賃(生産活動への対価) |
平均月額報酬 | – | 81,645円 | 16,507円 |
利用期間 | 原則2年間 | 定めなし | 定めなし |
対象者の例 | 2年以内に一般就労を目指す方 | 一般就労は難しいが、安定して働きたい方 | 自分のペースで働くことに慣れたい方 |
活動内容 | スキル訓練、職場体験、就職活動支援 | データ入力、清掃、カフェ業務など | 軽作業、部品組立、農作業など |
※平均月額報酬は、厚生労働省が公表した「令和3年度工賃(賃金)の実績について」に基づいています。
この表から分かる最も大きな違いは、就労移行支援が「就職準備のための訓練の場」であるのに対し、就労継続支援は「実際に働く場」であるという点です。さらに同じ継続支援でも、A型とB型では「雇用契約の有無」という決定的な違いがあります。
あなたに合うのはどれ?目的別診断チャートと詳しい解説
「違いは分かったけど、結局自分はどれを選べばいいの?」と感じる方のために、簡単な診断チャートをご用意しました。いくつかの質問に答えるだけで、あなたに合ったサービスの方向性が見えてきます。
【診断スタート】
質問1:事業所と「雇用契約」を結び、安定した給与を得たいですか?
- 【はい】 → 質問2へ
- 【いいえ】 → 質問3へ
質問2:現時点で、一般企業と全く同じ環境で働くことには不安がありますか?(支援のある環境で働きたいですか?)
- 【はい】 → あなたには【就労継続支援A型】が合っている可能性があります。A型は、雇用契約の安定性と支援のある環境を両立させたい方に最適です。安定した給与を得ながら、業務上のサポートを受けられるのが特徴です。
- 【いいえ】 → あなたには【就労移行支援】を経由した一般就労が合っている可能性があります。最終目標が一般企業への就職であり、そのためのスキルや準備を整えたい方に適しています。
質問3:主な目的は、将来の一般就職に向けた「訓練」ですか?それとも、今の自分にできる範囲で「働くこと」そのものですか?
- 【目的は訓練】 → あなたには【就労移行支援】が合っている可能性があります。すぐに働くのではなく、まずはビジネスマナーやPCスキルなどを学び、就職活動の準備を万全にしたい方に適しています。
- 【働くことそのもの】 → あなたには【就労継続支援B型】が合っている可能性があります。ご自身の体調やペースを最優先に、週1日・短時間からでも無理なく作業を始めたい方にぴったりです。
※注意:この診断はあくまで目安です。最終的には、ご自身の希望や状況を専門の相談員に伝え、一緒に最適なサービスを決定していくことが最も重要です。
各就労支援のサービス内容の詳しい解説
診断チャートで示された選択肢について、さらに理解を深めていきましょう。
就労移行支援とは?一般就職を目指すための「準備の場」
就労移行支援は、障害のある方が一般企業へ就職し、働き続けるために必要な知識やスキルを習得する「訓練の場」です。いわば、就職に向けた「学校」のような場所とイメージすると分かりやすいでしょう。
- 目的:一般企業への就職と、就職後の職場定着。
- 活動内容:ビジネスマナー研修、PCスキル訓練、コミュニケーション訓練、応募書類の作成サポート、面接練習、職場体験実習など、就職活動のAtoZをサポートします。
- 特徴:雇用契約を結ばないため、原則として給与は発生しません。利用期間は原則2年間と定められており、この期間内に就職を目指します。
こんな方におすすめ
- 2年以内の一般就労を強く希望している方
- 就職したいけれど、スキルや経験に自信がない方
- ひとりで就職活動を進めることに不安を感じる方
就労継続支援A型とは?支援を受けながら雇用される「職場」
就労継続支援A型は、一般企業で働くことは難しいものの、支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働くことが可能な方が利用する「支援付きの職場」です。
- 目的:支援のある環境で雇用契約を結び、働きながら自立した生活を目指すこと。
- 活動内容:データ入力、部品加工、カフェの店員、清掃、農作業など、事業所によって多岐にわたります。一般就労に近い業務内容も多くあります。
- 特徴:事業所と雇用契約を結びます。そのため、労働基準法が適用され、最低賃金以上の給与が保証されます。利用期間に定めはありません。
こんな方におすすめ
- 支援があれば、安定して働く意欲と能力がある方
- 雇用契約という安定した形で、給与を得たい方
- 将来的に一般就労を目指すためのステップにしたい方
就労継続支援B型とは?自分のペースで始める「活動の場」
就労継続支援B型は、年齢や体力の面で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、自分の体調やペースに合わせて軽作業などを行う「柔軟な活動の場」です。
- 目的:生産活動を通じて社会参加をし、工賃を得ること。また、生活リズムを整え、働くことへの自信を育むこと。
- 活動内容:箱折りやシール貼りといった軽作業、部品の組み立て、パンやお菓子の製造・販売など、比較的短時間から無理なく取り組める作業が中心です。
- 特徴:雇用契約を結ばないため、働く時間や日数に融通が利きやすいのが最大のメリットです。生産活動の対価として「工賃」が支払われます。
こんな方におすすめ
- まずは働くことに慣れることから始めたい方
- 体調に波があり、毎日通うのが難しい方
- 働くことを通じて、日中の居場所や社会とのつながりを見つけたい方
就職後の不安を解消する「就労定着支援」とは
「就職することがゴールじゃない。働き続けられるかが不安…」 就労移行支援などを利用して一般就職を果たした方の多くが、このような不安を抱えています。
そんな時に頼りになるのが「就労定着支援」というサービスです。これは、就職後も最長で3年半、職場に定着できるよう継続的なサポートを受けられる制度です。
具体的なサポート内容
- 定期的な面談:仕事上の悩みや生活リズムの相談など。
- 職場訪問:支援員が職場を訪問し、企業側と連携して働きやすい環境を調整。
- 関係機関との連携:医療機関や家族と連携し、総合的にサポート。
この支援があることで、就職後に出てくる新たな課題にも一人で抱え込まずに対応でき、安心して働き続けることができます。
就労移行支援事業所の多くは、この就労定着支援も一体的に提供しています。
利用開始までの具体的な流れと相談先
「自分に合うサービスが分かってきたけど、どうやって利用を始めるの?」という疑問にお答えします。利用開始までの大まかな流れは以下の通りです。
- 相談 まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業所に相談します。ここで、ご自身の状況や希望を伝え、どのサービスが合っているか専門家と一緒に考えます。
- 事業所の見学・体験利用 興味のある事業所が見つかったら、実際に見学や体験利用をしてみましょう。事業所の雰囲気やプログラム内容が自分に合うかを確認する、非常に重要なステップです。
- サービス等利用計画案の作成 相談支援事業所の「相談支援専門員」が、あなたの希望や目標をヒアリングし、サービスの利用計画案を作成してくれます。
- 市区町村への申請・支給決定 利用計画案を添えて、市区町村の窓口にサービスの利用を申請します。審査後、問題がなければ「障害福祉サービス受給者証」が発行されます。
- 事業所との契約・利用開始 受給者証を持って事業所に行き、利用契約を結びます。これで、いよいよサービスの利用がスタートします。
費用はかかる?利用料金と収入の仕組みを解説
就労支援サービスの利用にあたり、多くの方が気になるのが費用面です。
サービスの利用料金は、前年の世帯所得に応じて自己負担の上限額が定められています。多くの場合は自己負担なし(0円)で利用されていますが、所得によっては一部負担が発生することもあります。
世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
(※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は除く)
多くの方が自己負担なく利用できる制度になっていますが、ご自身の詳しい負担額については、市区町村の窓口で必ず確認するようにしてください。
【利用者の声】ケーススタディ
実際にサービスを利用して、新たな一歩を踏み出した方の例を見てみましょう。
ケース1:B型から自信をつけ、A型へステップアップしたAさん(30代) 「長年ひきこもりがちで、働く自信を完全に失っていました。最初は週2日のB型事業所に通うことから始め、簡単な軽作業を通じて『自分にもできることがある』と感じられるように。生活リズムが整い、スタッフの方に励まされる中でA型事業所に挑戦したいという気持ちが芽生え、今では雇用契約を結んでデータ入力の仕事をしています。B型での経験がなければ、今の自分はなかったと思います。」
ケース2:就労移行支援のPCスキル訓練が、事務職への就職に繋がったBさん(20代) 「学生時代に精神的に落ち込み、就職活動ができませんでした。就労移行支援では、WordやExcelの基本から応用まで丁寧に教えてもらえたのが大きかったです。資格も取得でき、自信を持って面接に臨めました。応募書類の添削や面接練習も、一人では絶対にできなかったこと。就職後も定着支援で相談に乗ってもらっており、とても心強いです。」
よくある質問(FAQ)
最後に、就労支援サービスに関してよく寄せられる質問にお答えします。
障害者手帳がないと利用できませんか?
必ずしも必須ではありません。障害者手帳をお持ちでない方でも、医師の診断書や意見書など、「障害福祉サービスの利用が必要である」と市区町村が判断すれば、利用が可能な場合があります。まずは窓口で相談してみてください。
年齢制限はありますか?
原則として、18歳以上65歳未満の方が対象となります。ただし、65歳になる前にサービスの利用を開始していた方などは、65歳以降も継続して利用できる場合があります。
サービスの切り替えや、複数のサービスを同時に利用することはできますか?
サービスの切り替えは可能です。例えば、「就労移行支援を利用していたけれど、まずは継続支援B型で働くことに慣れたい」と感じた場合、必要な手続きを踏むことでサービスを切り替えることができます。まずは現在の事業所スタッフや相談支援専門員に相談しましょう。
一方、複数のサービスを同時に利用(併用)することは原則としてできません。「平日は就労移行支援、土曜は継続支援A型」といった利用は認められていませんのでご注意ください。
失敗しない事業所の選び方を教えてください。
以下の3つのポイントをチェックすることをおすすめします。
①通いやすさ:自宅からの距離や交通手段など、無理なく通い続けられる場所かを確認しましょう。
②プログラム内容:ご自身が学びたいスキルや、やってみたい仕事内容に合っているかを見極めましょう。
③事業所の雰囲気:スタッフや他の利用者の方々の様子、事業所全体の空気感が自分に合うかどうかは非常に重要です。必ず見学や体験利用をして、実際の雰囲気を肌で感じてみてください。
まとめ:あなたに合った支援は、未来への大切な一歩
今回は、就労移行支援と就労継続支援A型・B型の違いについて、具体的な利用方法や料金なども含めて詳しく解説しました。
- 就労移行支援は、一般企業への就職を目指す「訓練の場」
- 就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く「支援付きの職場」
- 就労継続支援B型は、自分のペースで無理なく働ける「柔軟な作業の場」
「今のサービスが合わない」と感じることや、「どのサービスを選べばいいか分からない」と悩むことは、決して悪いことではありません。それは、ご自身と真剣に向き合い、より自分らしく力を発揮できる場所を探している大切な証拠です。
この記事が、あなたのそんな思いを後押しし、最適なサービスを見つけるための羅針盤となれば幸いです。
少しでも興味のあるサービスが見つかったら、まずは一歩、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に問い合わせてみましょう。専門家があなたの状況を丁寧に聞き取り、次の一歩を力強くサポートしてくれます。あなたに合った場所は、必ず見つかります。