画像1枚目 │ 「就労移行支援」とは?お金はかかる?本当に就職できる?あなたの疑問、全部解説します!

悩んでいる
Aさん

一般企業で働きたいけれど、ブランクがあって自信がない…

自分の障害特性に合う仕事が、どんなものか分からない…

何から準備を始めたらいいのか…そもそも誰に相談すればいいんだろう?

もしあなたが今、このような不安や悩みを抱えているなら、この記事はきっとあなたのためのものです。この記事では、障害のある方が一般企業への就職を目指すための公的な福祉サービス「就労移行支援」について、専門家がその全てを徹底的に解説します。

この記事を最後まで読めば、制度の基本的な仕組みから、他のサービスとの明確な違い、利用するメリット、そして「もし、うまくいかなかったら…?」といった誰もが抱く不安まで、あなたの全ての疑問が解消されるはずです。

一人で抱え込まず、まずは「こんなサポートがあるんだ」と知ることから始めてみませんか?あなたの「働きたい」という想いを実現するための、最初の一歩をこの記事がナビゲートします。


まずはこれだけ押さえればOK!就労移行支援の要点まとめ

時間がない方のために、まずは就労移行支援の最も重要なポイントをまとめました。

目的障害のある方が、一般企業へ就職し、働き続けるための準備をすること。
対象者・18歳以上65歳未満で、一般企業への就職を希望する障害や難病のある方。
・障害者手帳がなくても、医師の診断書などで利用できる場合があります。
利用期間原則として最長24ヶ月(2年間)です。
利用料金前年の世帯所得によりますが、利用者の約9割が自己負担0円で利用しています。
主なサポート・PCスキルやビジネスマナーなどの職業訓練
・自己分析やキャリア相談
・職場探し、履歴書添削、模擬面接
・就職後の定着支援(職場での悩み相談や環境調整)

就労移行支援とは法律にもとづく安心の就職サポート制度

「就労移行支援」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんね。 一言でいえば、これは「障害のある方が、一般企業への就職に必要なスキルと自信を身につけるための訓練校」のような場所です。

重要なのは、これが「障害者総合支援法」という法律に基づいて提供される公的な福祉サービスであるという点です。国が認めた安心の制度のもとで、専門スタッフがあなたの就職をマンツーマンで支えてくれます。

【関連記事】 障害者の就労支援サービス5種を徹底比較!公的データでわかる、あなたに最適な選び方│「自分に合う就労支援はどれ?」そんな疑問に、厚生労働省のデータを基に答えます。5つのサービスの違い、メリット・デメリット、具体的な手続きの流れまでを網羅。



【徹底比較】他のサービスとの違いは?

就職を考えたとき、あなたの周りには様々な選択肢があります。就労移行支援が自分にとって最適か判断するために、他の類似サービスとの違いを正確に理解しておきましょう。

就労継続支援(A型・B型)との違い

最もよく混同されるのが「就労継続支援」です。この2つの最も大きな違いは「ゴール(目的)」です。

  • 就労移行支援:ゴールは「一般企業への就職」
  • 就労継続支援:ゴールは「福祉事業所内で働き続けること」

もしあなたの希望が「一般企業で働くこと」なのであれば、まず検討すべきは「就労移行支援」です。

【関連記事】 就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の違いとは?あなたに合うサービスがわかる選び方│「就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)って何が違うの?」と悩んでいませんか?この記事では3つのサービスを目的・給料・対象者から徹底比較。

自立訓練との違い

自立訓練は、日常生活や社会生活をスムーズに送るためのスキル(金銭管理や家事など)を身につけることを目的としています。一方、就労移行支援は「働くこと」に特化した訓練を行います。

ハローワークや職業訓練(ハロートレーニング)との違い

ハローワークも職業訓練も、就職を支援する公的機関ですが、就労移行支援には障害のある方に特化した、以下のような大きな強みがあります。

  • 障害特性への深い理解:スタッフが障害に関する専門知識を持ち、あなたの特性に合わせたサポートを提供します。
  • 個別支援計画:一人ひとりのペースや目標に合わせたオーダーメイドの訓練計画を立てます。
  • 体調管理やコミュニケーション:安定して働くために不可欠な、心身のセルフケアや職場での対人スキルも学べます。
  • 手厚い定着支援:就職して終わりではなく、働き始めた後も長く続くサポートがあります。

▼ サービス比較表

項目就労移行支援就労継続支援A型就労継続支援B型ハローワーク/職業訓練
目指す場所一般企業事業所内での継続就労事業所内での活動一般企業
雇用契約なしありなしなし
給与/工賃原則なし給与(最低賃金以上)工賃なし(訓練手当ありの場合も)
障害への配慮非常に手厚い手厚い手厚い相談は可能だが専門性は様々
定着支援あり(強み)なし(事業所内での支援)なし(事業所内での支援)原則なし

どんな人が利用できる?対象者と利用条件

ご自身が利用できるか、以下の条件を確認してみましょう。

対象となる方 一般企業への就職や、仕事で自立することを目指している、以下のような方が対象です。

  • 身体障害、知的障害、精神障害(うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害など)、発達障害(ASD、ADHD、LDなど)、難病などがある方
  • 原則として18歳以上65歳未満の方
  • 現在、離職・休職中の方や、一度も就職したことがない方

【重要】障害者手帳は必須ではありません 「障害者手帳がないと利用できない」と思われがちですが、そんなことはありません。医師の診断書や意見書、または自治体の判断によって利用が認められるケースは多くあります。まずは諦めずに、お住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。


具体的にどんなサポートが受けられる?相談から就職後まで

就労移行支援事業所では、あなたの状況や希望に合わせて、就職準備から就職後の定着まで、一貫したサポートを受けることができます。

① 個別支援計画にもとづく職業訓練 専門スタッフとの面談を通して、あなたの強みや課題、目標を整理し、オーダーメイドの「個別支援計画」を作成します。その計画に沿って、以下のような多岐にわたる訓練を受けられます。

  • PCスキル:Word、Excel、PowerPoint、Webデザイン、プログラミングなど
  • ビジネスマナー:挨拶、電話応対、名刺交換、ビジネスメールの書き方など
  • コミュニケーション:報告・連絡・相談、ストレス対処法など
  • 作業系訓練:軽作業、ピッキング、清掃など

② 自己理解を深めるための相談支援 定期的な面談を通じて、自分の得意・不得意、ストレスへの対処法(セルフケア)などを専門家と一緒に整理します。これが、自分に合った仕事や職場環境を見つけるための大切な土台となります。

③ 職場探しとミスマッチを防ぐ職場実習 ハローワークなどと連携し、あなたに合った求人を探すお手伝いをします。また、実際に興味のある企業へ行って仕事を体験する「職場実習(インターン)」の機会もあります。働く前に職場の雰囲気や仕事内容を体験できるので、「思っていたのと違った」というミスマッチを効果的に防げます。

④ 専門家と二人三脚の就職活動 就職活動が本格化すると、応募書類の添削や模擬面接を繰り返し行い、自信を持って本番に臨めるようサポートします。希望すれば、スタッフが企業の面接に同行してくれることもあり、一人で活動するよりもはるかに心強いです。

⑤ 就職後の「働き続ける」を支える定着支援 就労移行支援のゴールは「就職すること」ではありません。「その職場で長く、自分らしく働き続けること」です。多くは抽象的にしか語られていませんが、定着支援は非常に具体的で手厚いサポートです。

  • 期間:多くの事業所では、就職後6ヶ月間を重点サポート期間とし、その後も必要に応じて数年単位で相談が可能です(国の就労定着支援制度を利用すれば最長3年半)。
  • 内容
    • 定期面談:支援員があなたと定期的に面談し、仕事の悩みや人間関係の不安などをヒアリングします。
    • 企業との連携:あなたの許可を得た上で、支援員が職場の上司とも面談し、働きやすい環境を整えるための調整(業務量の調整、指示の出し方の工夫など)を一緒に行います。
    • 生活面の相談:仕事だけでなく、安定した生活を送るための相談にも乗ってくれます。

【利用者のストーリー】Aさん(30代・うつ病で離職)の場合

前職を体調不良で離職し、2年間のブランクがあったAさん。当初は「また社会に戻れるだろうか」という強い不安を抱えていました。 就労移行支援事業所に通い始め、まずは週3日の通所から生活リズムを整えることからスタート。PCスキルの訓練で自信を取り戻し、自己分析を通じて「自分のペースで集中できる仕事」が向いていると気づきました。 職場実習を経て、データ入力の仕事に就職。就職後も定着支援を利用し、月1回の支援員との面談で仕事の進め方を相談。企業側にも業務量の調整をお願いしてもらったことで、無理なく働き続けることができ、今では正社員として活躍しています。


費用はかかる?利用料金と生活費の考え方

利用料金について

就労移行支援は国の補助がある福祉サービスのため、利用料金は前年の世帯所得に応じて決まります。しかし、厚生労働省の調査によると、利用者の約9割が自己負担0円(無料)でサービスを利用しており、多くの方にとって金銭的な負担はほとんどありません。

世帯の所得状況負担上限月額
生活保護受給世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)9,300円
上記以外37,200円

※ご自身の負担額がいくらになるか、正確な金額はお住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認できます。

【重要】訓練期間中の生活費について

利用料が無料でも、訓練が主体のため原則として給料は発生しません。これは訓練に集中する上で、非常に現実的な課題です。しかし、利用者が活用できる可能性のある公的支援制度がいくつかあります。

  • 失業保険(雇用保険):前職で雇用保険に加入していた場合、受給できる可能性があります。
    【関連記事】 「【社労士監修】就労移行支援と失業保険の完全ガイド」では、障害者手帳をお持ちの方向けの給付日数延長や給付制限免除といった特例、具体的な給付額の計算方法、手続きまでを社労士監修で完全解説
  • 障害年金:障害の程度に応じて受給できる公的年金です。
  • 自立支援医療制度:心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
  • 生活福祉資金貸付制度:低所得世帯などを対象に、生活費などを貸し付ける制度です。

これらの制度が利用できるかどうかは個々の状況によりますので、事業所のスタッフやお住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。


どのくらいの期間利用する?原則2年間の使い方

就労移行支援の利用期間は、原則として最長24ヶ月(2年間)と定められています。この期間内に、訓練から就職活動、そして職場定着までを目指します。 ただし、自治体の審査により必要性が認められれば、最大12ヶ月の延長が可能な場合もあります。

もし2年で就職できなかったら?

利用者にとって、これは最大の不安かもしれません。しかし、心配しすぎる必要はありません。 万が一、期間内に一般就労が叶わなかった場合でも、道が閉ざされるわけではありません。 例えば、就労継続支援(A型・B型)に移行して、まずは福祉的なサポートのある環境で働く経験を積み、そこから再度、一般就労を目指すという選択肢があります。

最も大切なのは、就労移行支援で過ごした時間は決して無駄にはならないということです。ここで得たスキル、自己理解、そして「自分はできる」という自信は、あなたの人生にとって必ずプラスになる貴重な資産となります。



失敗しないために知っておきたい注意点・デメリット

就労移行支援は非常に有効なサービスですが、誰にとっても完璧というわけではありません。事前に知っておくべき注意点やデメリットを正直にお伝えします。これらを理解することが、あなたに合った選択をするための第一歩です。

就労移行支援の主なデメリット

  • 原則として給料(工賃)が出ないため、訓練期間中の生活費の確保が必要
  • 利用期間が原則2年間という上限がある
  • 事業所によってプログラムの質や専門性に差がある

こんな人は注意が必要?ミスマッチが起きやすいケース

  • スタッフとの相性や事業所の雰囲気を重視しない方
  • 「すぐにでも働きたい」と考えている方(訓練期間が必要なため)
  • 学びたいスキルや目標が明確でないまま利用を開始してしまう方

自分に合う事業所の選び方【5つの重要ポイント】

就職という目標を達成するためには、パートナーとなる事業所選びが最も重要です。以下の5つのポイントを必ずチェックしましょう。

✅ 1. プログラム内容は自分の希望と合っているか
自分が学びたいスキル(例:事務職希望ならPCスキル、軽作業希望なら作業系訓練)を学べるか確認しましょう。事業所には、幅広い職種に対応する総合型の事業所に加え、特定の分野に強みを持つ**特化型**の事業所があります。

  • IT・Web系に特化: プログラミングやWebデザインが学べる「LITALICOワークス」や「atGPジョブトレIT・Web」など
  • 精神障害のサポートに特化: 対人関係やストレスコントロールのプログラムが充実している「ココルポート」など
  • 発達障害のサポートに特化: 独自のプログラムで強みを活かす支援を行う「ディーキャリア」など

このように、ご自身の希望や特性に合わせて事業所のタイプを絞り込むことが、ミスマッチを防ぐ第一歩です。(※事業所の情報は変更される場合があるため、必ず公式サイトで最新のプログラムをご確認ください)

✅ 2. 事業所の雰囲気やスタッフとの相性 見学や体験利用を通じて、事業所の雰囲気は明るいか、清潔か、スタッフは親身に話を聞いてくれるかなどを肌で感じてみましょう。「ここに通いたい」と直感的に思えるかも大切なポイントです。

✅ 3. 就職実績と「定着率」 「どんな企業に、年間何人くらい就職しているか(就職実績)」はもちろんですが、それ以上に「就職した人が、半年後や1年後も働き続けられているか(定着率)」を必ず確認しましょう。高い定着率は、質の高いサポートと、ミスマッチの少ない就職を実現している証拠です。

✅ 4. 無理なく通える「通いやすさ」 原則2年間、週に数回通うことになるため、自宅からの距離や交通手段など、無理なく通える場所にあるかを確認しましょう。交通費の補助制度があるかも重要なチェックポイントです。

✅ 5. 障害への理解と専門性 自分の障害特性への理解が深い事業所を選ぶと、よりきめ細やかなサポートが期待できます。スタッフの専門性や、同じ障害のある利用者がどのくらいいるかも参考にしましょう。

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ご利用までの流れ(5ステップ)

実際に就労移行支援を利用するまでの大まかな流れは、以下の5ステップです。

ステップ①:相談

まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口や、相談支援事業所に「就労移行支援を利用したい」と相談します。

ステップ②:事業所の見学・体験

インターネットなどで事業所を探し、気になる場所があれば積極的に見学や体験利用を申し込みましょう。複数の事業所を比較検討することが成功の鍵です。

ステップ③:利用計画案の作成

相談支援事業所の相談支援専門員が、あなたの希望や目標をヒアリングし、「サービス等利用計画案」を作成します。

ステップ④:受給者証の申請・交付

市区町村の窓口に、利用計画案などの必要書類を提出して利用を申請します。審査を経て、サービスの利用が認められると「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。

ステップ⑤:利用契約・利用開始

利用したい事業所と契約を結び、いよいよサービスの利用スタートです。


よくある質問(FAQ)

働きながらでも利用できますか?

原則として、休職中や離職中の方が対象となるため、企業に在籍しながらの利用は難しい場合が多いです。ただし、自治体の判断によっては、アルバイトをしながらの利用などが認められるケースもあります。まずはお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

障害者手帳がないと利用できませんか?

いいえ、必須ではありません。医師の診断書や、自治体の判断によって利用できる場合があります。諦めずにまずは相談してみることが大切です。

途中で辞めることはできますか?

はい、可能です。体調の変化や、目標の変更などにより、利用を続けることが難しくなった場合は、事業所のスタッフに相談すれば退所の手続きができます。

本当に就職できるのでしょうか?

就職は最終的にご本人の努力と企業とのご縁になりますが、就労移行支援を利用することで、その可能性を大きく高めることができます。厚生労働省のデータ(令和2年度)によると、就労移行支援を経て一般企業へ就職した方の割合は50%を超えています。一人で活動するよりも、専門家のサポートがあった方が、はるかに心強く、効率的に就職活動を進められるでしょう。


まとめ:まずは一歩、見学から始めてみませんか?

この記事では、就労移行支援の制度概要から、具体的なサポート内容、利用までの流れ、そして失敗しない事業所の選び方までを網羅的に解説しました。

就労移行支援は、あなたの「働きたい」という気持ちに寄り添い、就職というゴールまで一緒に伴走してくれる心強いパートナーです。

もしあなたが、

  • 何から始めればいいか分からない
  • 自分に合った仕事を見つけたい
  • 専門的なサポートを受けながら就職準備を進めたい

と感じているなら、就労移行支援はきっとあなたの力になります。 この記事を読んで、少しでも「話を聞いてみたい」「どんな場所か見てみたい」と感じたら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。

その一歩とは、お住まいの地域の就労移行支援事業所を探して、見学を申し込むことです。

多くの事業所が無料で見学や相談を受け付けています。まずは雰囲気を知るだけでも、あなたの不安はきっと軽くなるはずです。