悩んでいる
Aさん

今の就労移行支援、なんだか合わない…。辞めたいけど、スタッフにどう伝えればいいんだろう。「もう少し頑張ろう」って言われそうで言い出せない…。

そのお気持ち、とてもよく分かります。勇気を出して伝えても、強く引き止められてしまうケースもありますよね。でも大丈夫。就労移行支援を辞めることは、あなたの権利です。トラブルなく、スムーズに次の一歩へ進むための手順と伝え方のコツを一緒に見ていきましょう。

「このまま通い続けても、本当に就職できるのだろうか」「人間関係がストレスで、事業所に行くのがつらい」そんな思いを抱えながら通所を続けるのは、心身ともに大きな負担になります。

この記事では、あなたが円満に現在の事業所を退所し、自分に合った道へ進むために必要な情報をまとめました。

  • なぜ事業所は引き止めようとするのか?
  • トラブルにならない円満な退所手続きの進め方
  • 【例文あり】退所理由の上手な伝え方
  • どうしても辞めさせてくれない時の相談先
  • 退所後の選択肢には何があるのか

この記事を読めば、退所への不安が解消され、自信を持って次のステップに進めるはずです。

就労移行支援を辞めるのは「悪いこと」じゃない

まず、最も大切なことをお伝えします。就労移行支援を途中で辞めることは、決して悪いことでも、逃げることでもありません。

就労移行支援は、あなたに合った働き方を見つけるための「手段」の一つです。その手段が合わなくなったのなら、別の手段を探すのは当然の権利です。

  • 事業所の雰囲気やプログラムが合わない
  • スタッフとの相性が良くない
  • 経済的な事情が変わった
  • 体調が変化した
  • もっと自分に合う事業所を見つけた

どのような理由であれ、あなたが「辞めたい」と決断したのなら、それは尊重されるべきです。罪悪感を抱く必要は全くありません。

なぜ事業所は引き止めるの?知っておきたい2つの理由

とはいえ、強い引き止めにあって困っている方もいるでしょう。なぜ事業所は利用者を辞めさせたくないのでしょうか?主な理由は2つあります。

理由1:事業所の収入が減るから

就労移行支援事業所の運営費の大部分は、国や自治体からの「訓練等給付費」で賄われています。この給付費は、利用者の通所日数に応じて支払われる仕組みです。

つまり、利用者が一人辞めてしまうと、その分事業所の収入が直接的に減少してしまいます。特に経営に余裕のない一部の事業所では、収入減を恐れて強く引き止めるケースが見られます。

理由2:利用者の将来を心配しているから

もちろん、全ての引き止めが悪意からではありません。スタッフが純粋にあなたの将来を心配し、「ここで諦めてほしくない」「もう少し続ければきっと良い方向に向かう」という思いから、熱心に説得してくる場合も多くあります。

どちらの理由であれ、最終的に決めるのはあなた自身です。相手の事情を理解しつつも、自分の意思をしっかりと伝えることが大切です。

トラブル回避!円満に退所するための3ステップ

感情的にならず、順序立てて進めることが円満退所のコツです。以下の3つのステップで進めましょう。

STEP1:自分の意思を固め、伝える準備をする

まず、なぜ辞めたいのか、辞めた後どうしたいのかを自分の中ではっきりとさせます。「なんとなく辞めたい…」という状態だと、スタッフの説得に流されてしまいがちです。自分の考えを整理し、「辞めます」とはっきり言える決意を持ちましょう。

STEP2:スタッフに「相談」ではなく「報告」として伝える

辞める意思を伝える際は、「辞めたいんですけど…」という相談口調ではなく、**「〇月いっぱいで退所します」と決定事項として報告**しましょう。これにより、相手に「説得の余地はない」という印象を与え、話がスムーズに進みやすくなります。

STEP3:必要な手続きを確認し、書類を提出する

退所の意思を伝えたら、具体的な手続きについて確認します。多くの事業所では「利用終了届」や「退所届」といった書類が用意されています。サインや捺印が必要な場合もあるので、指示に従って手続きを完了させましょう。基本的には、事業所側が自治体への手続きを行ってくれるため、あなた自身が役所に行く必要はほとんどありません。

【理由別】引き止められにくい退所理由の伝え方(例文付き)

退所理由を伝える際に、正直に言いすぎて話がこじれることもあります。相手が反論しにくい、客観的な事実を元にした伝え方を心がけましょう。

ケース1:人間関係や事業所の雰囲気が合わない場合

NG例:「〇〇さんが嫌いだから辞めます」「ここの雰囲気が合いません」
→ 個人的な感情を理由にすると、「もう少し我慢しよう」「それはあなたの問題だ」と反論されやすくなります。

OK例:「集団での訓練がストレスになり、最近は夜も眠れず、体調に影響が出てきてしまいました。医師とも相談し、一度環境を変えて心身を休めることにしましたので、退所します。」
→ 「体調」や「医師の判断」といった客観的な事実を理由にすることで、相手は引き止めにくくなります。

ケース2:プログラム内容に不満がある・意味ないと感じる場合

NG例:「ここの訓練は意味ないと思います」
→ 事業所の支援内容を直接的に否定すると、相手の感情を逆なでし、トラブルに発展しかねません。

OK例:「こちらで基礎を学ばせていただいたおかげで、次にやりたいことが明確になりました。今後は〇〇(プログラミング、Webデザインなど)の分野に特化した学習に集中したいため、退所を決意しました。」
→ 事業所への感謝を示しつつ、ポジティブで前向きな理由を述べることで、相手も応援しやすくなります。

ケース3:経済的な理由の場合

NG例:「お金がないので辞めます」
→ 漠然と伝えると、「なんとかなる」「もう少し頑張ろう」と説得される可能性があります。

OK例:「失業保険の給付期間が終了するため、〇月以降の通所が経済的に困難になりました。今後は収入を得ることを優先する必要があるため、退所させていただきます。」
→ 「失業保険の終了」という、誰にも動かせない具体的な事実を伝えるのが効果的です。

どうしても辞めさせてくれない時の「最終手段」

もし、明確に退所の意思を伝えても、不当な引き止めにあって話が進まない場合は、一人で抱え込まずに外部の力を借りましょう。

公的な相談窓口

1. 市区町村の障害福祉課(担当窓口)
まずは、あなたの受給者証を発行した役所の担当窓口に相談しましょう。「事業所を辞めたいが、話が進まない」と伝えれば、担当者が事業所に指導・助言をしてくれる場合があります。

2. 都道府県の運営適正化委員会
これは福祉サービスに関するトラブルを解決するための第三者機関です。役所に相談しても解決しない場合の、より強力な相談先となります。各都道府県の社会福祉協議会内に設置されています。

一人で悩まず、これらの窓口に連絡すれば、必ずあなたの力になってくれます。

辞めた後はどうする?3つの選択肢

就労移行支援を辞めた後、多くの人が以下のような道に進んでいます。あなたの状況に合わせて、次のステップを考えてみましょう。

選択肢1:別の就労移行支援事業所に移る

「今の事業所は合わないけど、就職は目指したい」という場合は、別の事業所に移るのが最もおすすめです。事業所によって雰囲気やプログラムは全く異なります。2〜3ヶ所見学・体験して、自分に合った場所をじっくり探しましょう。

選択肢2:就労継続支援(A型・B型)を利用する

「すぐに一般企業で働くのはまだ不安」「まずは短い時間から働き始めたい」という場合は、就労継続支援が選択肢になります。

  • A型事業所:雇用契約を結び、給料をもらいながら働きます。安定した収入を得たい方向けです。
  • B型事業所:雇用契約を結ばず、体調に合わせて自分のペースで作業を行い、「工賃」を得ます。まずは社会参加の場から始めたい方向けです。

選択肢3:一度、福祉サービスから離れる

心身の疲労が激しい場合は、一度ゆっくり休むことも大切な選択です。自宅で療養したり、ハローワークの障害者窓口で相談したりしながら、自分のペースで次の道を考えましょう。

まとめ:自分のための決断を、自信を持って。

就労移行支援を辞めることは、決してネガティブなことではありません。それは、あなたが自分の状況と真剣に向き合い、より良い未来のために下した**「前向きな決断」**です。

この記事のポイント

  • 辞めることはあなたの権利。罪悪感は不要。
  • 退所を伝える時は「相談」ではなく「報告」の形で。
  • 理由は「体調」や「経済事情」など、客観的な事実を伝えるとスムーズ。
  • どうしても話が進まなければ、役所の障害福祉課に相談する。
  • 辞めた後も、別の事業所に移る、A型・B型を利用するなど選択肢はたくさんある。

この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための後押しになれば幸いです。